アタックシーズン中に起きた再三のブレーキロック,プロ単走からのキャパ不足指摘,そして最後に行ったプリロードテストの結果から,
先日のTC1000よりフロントのスプリングを再び14キロに戻しました.
フロントに14キロのスプリングを組むのはこれが2回目で,前回はHYPERCOの800ポンド(14.3キロ)だったのですが,今回はこれまで使っていたHAL springsの中反発・12キロをそのまま2キロ上げた14キロを使う事にしました.
同じ銘柄で12キロ→14キロを上げた結果がどうだったのか? 今回はその結果を纏めておきたいと思います.
まずは,いつもの通りサンプルとなるデータのおさらいから.
【12キロ:41.468】
【14キロ:41.676】
14キロの当日ベストは 41.607 でもう0.07秒速かったのですが,ベスト時はドライビング的に色々ミスっているので比較に用いるには不適切と判断し,セカンドベストの方を採用する事にしました.この結果,タイム的にはちょうど0.2秒落ちとなります.
「タイム落ちてんのか.ダメじゃん!」と言いたくなりますが,当日のコンディションは大分違うので,そちらのデータも確認しておきます.
12キロ ・・・ 大気圧:1014hPa 吸気温:24℃
14キロ ・・・ 大気圧:1013hPa 吸気温:32℃
気圧はほぼイーブンですが,吸気温は8℃も違いますね・・・.
吸気温≒気温と見なし,これがTC1000において何秒に相当するか調べてみると(↓),
8℃差=0.16秒に相当するようなので,0.2 - 0.16 = 0.04秒程度遅くなっている計算となりそうです.orz
アレ? やっぱり遅くなってる??と思いつつ,ここで
14キロ→12キロに落とした時の感触を引っ張り出してみます.
①1コーナーの動きが自然になった(フロントが入らず,リアが押し出されるようなチグハグな動きがない)
②2コーナーがアンダーステア気味になった(クルマが外に膨らみ続け,舵を戻せない)
③ヘアピン進入のブレーキングで良く止まるようになった
④フルブレーキング時に若干フロントタイヤがロック気味?
⑤インフィールドが非常に良く曲がるようになった
⑥最終コーナーは相変わらず向きが変わらず,ここは効果なし・・・?
今回は12キロ→14キロに上げているので,印象としてはこの逆になるはず・・・と考えるとこんな感じ(↓).
①1コーナーでフロントが入らなくなるはず
②2コーナーは曲がるようになるはず
③ヘアピン進入のブレーキングで止まらなくなるはず
④インフィールドで曲がらなくなるはず
⑤最終コーナーの感触は変わらないはず
では,実際14キロに上げて走ってみた感触としてはどうだったのか?というと,
①1コーナーでフロントが入るようになった
②2コーナーは曲がらなくなった
③ヘアピン進入のブレーキングでコントロールが楽になった
④インフィールドは変わらない
⑤最終コーナーは曲がらなくなった
という感じ.アレ? 予想と全然違う結果になってますね・・・.これがHYPERCOとHAL中反発の違いなのか? 気になるところなので上記の感触をロガーデータと照らし合わせてみます(赤:12キロ 青:14キロ).
1コーナー
1コーナー進入時点の最高速は,14キロ(青)の方が1km/h低いです(↓).
やはり気温8度の差は確実に出てますね.
そこからブレーキングして,ステアリングを切り込んでいく訳ですが(↓),
100km/hを切った辺りからの減速量が14キロ(青)の方が少ないです.つまり,より高い速度でコーナリングを開始している訳なのですが,これが先述の感触①(1コーナーでフロントが入るようになった)を裏付けていそうです.
そこから先,ボトムスピードはほぼ同等ですし,再加速のタイミングもほぼ同等ですし,1コーナーの進入~中間部分は14キロ(青)の方が良くなっていそうです.
2コーナー
バネレートを上げれば基本的に高速コーナーは速くなるはずなので,2コーナーも良くなって欲しいところですが,
残念ながら14キロ(青)の方が車速が伸びていません・・・.この原因は舵角で(↓),
本来であれば,2コーナーのIN側の縁石付近ではもう少しステアリングを切る量を減らしたいのですが,全体的にアンダーステア感があってステアを戻す事が出来ませんでした.この戻せないステアが操舵抵抗となり,先述の失速(車速が伸びない)に繋がっているのだと思われます.やはり感触②(2コーナーは曲がらなくなった)は正しそうですね.
ヘアピン
ブレーキの効き具合はあまり違いを感じませんでしたが,ターンイン時のステアリングレスポンスはやはり14キロ(青)の方が良かったので,コントロールの精度が上がった感はありました.
ロガーデータで確認してみると,12キロ(赤)よりも14キロ(青)の方がブレーキングの開始タイミングが遅れていてやはり効きは下がっていそう.但し,そこからの減速量の合わせ込みは出来ていて,クリッピングポイントもキレイなV字を描いています.やはりレートアップによってフロントの耐荷重が増えているので感触③(ヘアピン進入のブレーキングでコントロールが楽になった)は事実のようですね.
但し,ヘアピンの立ち上がりに目を向けてみると(↓),
14キロ(青)の方が立ち上がりで膨らんでいるので,2コーナーと同様に加速体勢に移るとアンダーステアが強まるようです.
インフィールド
感触④では「インフィールドは変わらない」との事でしたが,
若干突っ込み過ぎ&向きが微妙に変わってない事で0.1秒失っており,14キロ(青)のタイムダウンの主要因の1つとなっています.
最終複合
感触⑤では「最終コーナーは曲がらなくなった」との事でしたが,
洗濯板通過直後は14キロ(青)の方が高いボトムスピードを維持しています.この辺り,1コーナーと同様でステアリングレスポンスの良さを表している気がしますが,ブレーキをリリースして加速体勢に移ると,ヘアピンの立ち上がりと同様にアンダーステア気味となっており(↓),
その後も向きがなかなか変わらないのか? 再加速に移るポイントが遅れてしまっているため,これで更に0.1秒失って,トータル0.2秒差となっているようです.
以上,14キロ vs 12キロの同銘柄(HAL springs 中反発)編でした.纏めると14キロ化によって,
・ターンイン時のステアリングレスポンスは向上した
・その恩恵でブレーキングのコントロール精度も向上した
・フロントの耐荷重が増えた事でブレーキロックしにくくなった
・一方,立ち上がりではアンダーステアが強まった
・このアンダーステアは,速度域を問わず後傾姿勢になった時に出る
・なお,S字の切返し(左高速~洗濯板)でのステアリングレスポンスの向上はない
といった感じでした.今回はフロントのみ2キロ上げて,リアのレートはそのままなので,前後バランス的には相対的にリア側に寄り,後傾姿勢でアンダーステアが強まるのは当然かな,と思います.TC1000においてアンダーステアが強まるとタイムは落ちる一方なので,コンディションの差を考慮しても0.05秒ダウンは妥当な結果かな?と思いました.
一応,この後2本目でリアの内圧を上げて前後バランスの改善を試みたのですが,あまり効果がなかったので,立ち上がりのアンダーステアを解消するにはリアのレートアップも必要となりそうです.
(ダンパー的には既に上限のレートに達しているので,これ以上はダンパーの仕様変更が必要ですね・・・泣)