1994年7月29日（最終回）、の巻

仕事中に電話が入った。

手を止めて受話器を取る。こんな朝に入る電話でいい話があったことがない。

「車、売るぜ。」電話の男は言った。
「早くしないと値がさがっちまうからな。」

ボルボに乗っていた。ターボ付きの白いやつだ。11万キロ走ってずいぶんくたびれている。俺は電話の男にボルボの売り先を捜してもらっていたのだ。

「手元に置いておきたいだろうが、もう修理が上がってから日がたつしな。」

「ああ、キーは預けてある。よろしく。」

電話を切った。車には愛着を持つ方だ、と思ったのは最初の車を持ったときだった。
灰皿からはゴロワーズのいがらっぽい匂いが流れてきている。

と、冒頭から北方議三調ハードボイルドにきめてみました。
とうとう 740ターボとの別れの日が来てしまった。電話の男とは奈良トヨペットに勤める兄のことである。ようするに、修理からあがってきて荷物等を降ろし別れを告げてから兄に電話して引き渡すつもりだったが、ついつい一ヶ月近くもそのままにしておいたのだ
・綺麗にワックスをかけて、ピカピカにして送ってやろう、と思っていたが「綺麗にしても買取り価格はかわらないぞ」と言う兄の言葉に全てが終わった気がした。
その日の夕方、また兄から電話があり「程度も悪いし、しかたがないけど45万でしか売れなかった」とのこと。まあ、しかたがないと私も思ってしまいました。

そんなこんなで長い間お世話してきたボルボ740ターボは私のもとを去っていったのである。縦じまのメッキグリルとメインキー、フューエルリッドキー、それに沢山の想い出を残してはいるが。




※1994年の記録が出てきたので転載しています。当時28歳。カーグラの連載モノに憧れてそれ風の文章書いて楽しんでました😅
当時大好きで読みまくっていた北方謙三のパロディなど寒さが全開の最終回でしたね🤣　こんな事書いていた出力が出てきて面白くて記録に残そうと転載してきましたけど、忘れてた事いろいろ思い出して自分的には楽しかったです。